tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」

前提となるイギリスの歴史知識があったらいいな、じゃなくてマストだと思った。

これは物語を楽しむファンタジーではなくて、イギリスの今後について社会的な投げかけを読み取る、という姿勢で向き合えば理解しやすかった(←後で気づいた)

 

あとがきを先に読むべしでした。

 

この作品がテーマ本の読書会に行ってきて、そう思えた。

アーサー王伝説や民族間の対立やケルト文化etc

 

当日になっても半分も読み進めていなくて、会場に向かう電車の中で

必死に読んでいた。後半からようやく展開に勢いがついてのってきた。

それまでは淡々とイングランドの風景や不気味な描写が続いて、ゴールが見えなかった。

 

 

※以下、ネタバレ含みます。

 

ブリトン人vsアングロ・サクソン人

という構図が意外と重要だった。

 

 

ブリトン人の老夫婦が息子のところに会いに住んでいる村から旅へ

出るという。指輪物語のようなファンタジックな色合いもなく、老夫婦は出会う人たちに守られつつ旅路を進める。

 

ブリトン人サイド:老夫婦、アーサー王の甥ガウェイン(これはアーサー王伝説に本当に出てくる人物)

◇サクソン人サイド:ウィスタン騎士とエドウィン少年

 

①ともに龍退治という目標は一致しているが、どちらも自分がやってみせると敵対。

騙し合いながらも、道中をともにする。

 

ガウェインは、アーサー王の築いたブリトン人の栄光の時代を長らえさせたい。

一方、ウィスタン騎士とエドウィン少年は現状からの変化を強く望む。

*1

 

②龍が倒されたとき、記憶の霧は晴れ、ひとびとの失われていた記憶は取り戻される。

そこで遠ざかっていた争いの記憶、裏切りまでも戻ってしまう。

忘れることが災禍を洗い流し、違う民族が共存していくポジティブな手段ではあったというのは、思い出してよかった、で終われない結末。

 

<読書会で出ていた意見>

  • 時代を超えて何度でも思い出すことで、民族間の溝が深まるという作用
  • 老婆の持つ兎や2人で大事に運んだ卵はケルト民族の復活祭がモチーフ?

 

記憶の霧が晴れて明らかになった、老夫婦の過去も驚き。

どう考えても、思い出さない方が幸せだったと思う。ベアトリス。。。

最後は死にゆく妻との別れのシーンだと解釈した。

私は2人は島で暮らせないと思う。

どちらかにとって都合のいい愛の記憶は、2人にとっての愛の記憶ではないのかもしれない。

 

 

 

*1:

wikiで調べてみると、アーサー王は6世紀にブリトン人を率いて侵攻してきたサクソン人を撃退した人物なんですね。その系譜を継ぐのがガウェイン。

 

ブリトン人はケルト系土着民族であり、のちにサクソン人に支配されてしまう。

 

サクソン人のウィスタン騎士たちは新しい時代の幕引きをする役割を担っている。