”失われた「態」を求めて。"
帯にズバーンと書かれてる言葉通り。思ったより文法の解説メインでした。
医学書「ケアをひらく」シリーズとして出版されているところが異色。
なかなか読もうと思いにくいこの本、書評で見かけて興味を持ち、さらに学生時代の先輩からイチオシされたこともあり、ようやくクリックして注文。
ギリシャ語の例文を用いて、かつて存在していて、いつしか英文法の中では見られなくなった中道態とは一体どういうもので、どんな役割を果たすのかについて丁寧に帰納法アプローチを積み重ねた一冊。能動態「する」と受動態「される」のハーフのような中道態、読み終わって気持ちがふっと気持ちが軽くなった。
例えば「悼む」という状態は自分の意志であると同時に、他者によって引き起こされた感情ともいえ、能動態、受動態とはっきり分類しにくい感情という。こんな例文を重ねていくことで、意志への信頼が揺らぐのと同時に、これまでの人生で周りから受けてきた影響を明るく肯定できるようになってくる。
最後の章では白鯨で有名なメルヴィルの、ある小説の登場人物たちをロールモデル
として中道態についてまとめてあった。終わりにかけての失速と例を挙げたことで逆にわかりにくくなってしまってることは否めずな残念なエンディング。。
中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
posted with amazlet at 17.05.26