読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

カミュ「ペスト」

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。

 

これは気持ちにゆとりがあるときじゃないと読んじゃダメですね。

閉鎖された環境でバタバタと人が苦悶して死んでいくつらさに加えて、たまたま訪れただけなのに街から出られなくなってしまう不条理さ、さらに医師リウーの友人タルーの告白にある比喩としてのペスト。

ペスト以前に、何千という人間の死に間接的に同意していたという。正義感から始めた政治活動が結果的に人の処刑につながっていた事実。善だと信じてなすことであっても人を死に巻き込んでしまうペスト的状況がずっと続いてきたという。

物語の幕引きは、ペストの終息と予言が対になっていて最初から最後まで理性的な不吉さが漂っていて、鬱本ランクベスト3に入る本だった。

 

ペスト (新潮文庫)
ペスト (新潮文庫)
posted with amazlet at 17.05.07
カミュ
新潮社
売り上げランキング: 10,507