tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

江國香織「スイートリトルライズ」

p.206
「なぜ嘘をつけないか知ってる?人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに」
瑠璃子は、自分の言葉が自分の心臓をうすっぺらな紙のように簡単にひき裂いたのを感じた。
「あなたが美也子さんに嘘をつくように。私が聡に嘘をつくように」
絶望に実体があるとすれば、いまこの部屋にあるものがそれだ、と瑠璃子は思った。
 
 
テディベア作家として活躍している瑠璃子は何より夫の聡を大事にしているが、一緒にいることが目的と言わんばかりの内容のない縛り方をしていて、全然心が通じ合っていない。
 
その空虚さがずっと貫いていて、読んでる側にも感染してくる。
だからといってこの発言の相手に深い愛を抱いているというわけでもなく、トータルとして行き場のない感情が
右へ左へと流れていっているような感じ。登場人物の感情をすべて足し合わせると結局プラマイ0なんじゃないかっていう。不倫礼賛ってわけでもなく、真実の愛があるわけでもなく、川の流れに流されている人々。
 
やっぱり江國作品の魅力は恋に自ら溺れる女性だと思う。だから、ツールとして恋を使うようなこのタイプの話はいまいちだなーと思った。「がらくた」「東京タワー」「ホリーガーデン」あたりが好き。

 

 

 

スイートリトルライズ (幻冬舎文庫)
江國 香織
幻冬舎
売り上げランキング: 158,813