tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

小説

有川浩「ラブコメ今昔」

自衛隊もの短編集。 図書館戦争シリーズを読んでいたので特に違和感なく、特殊な設定には入っていけた。 それと昔、自衛隊の人と付き合っていたのでリアリティーというか懐かしいなぁという感覚を覚えた。 任務に出るたび、たとえ練習であっても死を覚悟して…

カズオ・イシグロ「夜想曲集」

うーん、微妙でした。 もっと大人になってバーでウィスキーを傾けるような年齢になればわかるのかもしれない憂愁。 5つの短編が収められていて、どれももやもや。 「老歌手」でアメリカの有名な歌手とその妻との一幕をベネチアの運河で手助けするギタリスト…

よしもとばなな「王国」その1~3

その1 アンドロメダ・ハイツ その2 痛み、失われたものの影、そして魔法 その3 ひみつの花園 山から降りてきた18歳の雫石、占い師で生計を立てる楓、サポート役のゲイの恋人片岡さん、植物男子真一郎くん、おばあちゃん、ときどきほかの人たち 互いの関係は…

有川浩「レインツリーの国」

白い空にクリーム色の紙飛行機の表紙。 この写真がとってもしっくりくる始まり方。 ふと飛ばしてみた手紙から始まる小さな恋の物語。 上京3年目、こてこての関西人伸行は、中学生の時に読んだラノベの感想を何の気なしに検索した。たどり着いたのが「レイン…

川端康成「千羽鶴」

うーん、三島が意識的な変態なら、川端康成はナチュラルな変態だなと思う。流れるような自意識で、さらりとして侘び寂びを感じる文体。わたしはとっても好きになった。そんな中、話がぶつりと終わってしまったので、呆然となった。 解説を読むと、九州取材旅…

カミュ「ペスト」

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条…

いとうせいこう「想像ラジオ」

こんばんは。 あるいはおはよう。 もしくはこんにちは。 想像ラジオです。 こういうある種アイマイな挨拶から始まるのも、この番組は昼夜を問わずあなたの想像力の中でだけオンエアされるからで、月が銀色に渋く輝く夜にそのままゴールデンタイムの放送を聴…

オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」

まじめな小説でした。19世紀の小説とは思えないフレッシュさ。 もちろん、取り巻く景色はロンドンの社交界とか阿片窟とかで古いのだけどその心はほぼ現代人と同じ。 美貌の青年、ドリアン・グレイがヘンリー卿という年上の大人に感化されてどんどん悪い人間…

リチャード・パワーズ「幸福の遺伝子」

"彼女が幸せなのは遺伝子のせい?” 難民にも関わらず、どんな時でもポジティブで喜びにあふれたタッサ。 アメリカの大学で臨時講師として働くラッセルが目の当たりにする、 関わる人すべてに伝染していく幸せの驚異的なパワー。 ふとしたきっかけから、メデ…

遠藤周作「海と毒薬」

戦後、F市の大学病院で行われた外国人捕虜の生体解剖実験。 罰はあれども、罪はあったのだろうか、と問う。 凄惨な医療現場を描くのかと思ってびくびくしながら読むも、肝心の実験はあっけなく終わる。実験から年月が流れたあとの東京郊外から始まり、関わ…

遠藤周作「沈黙」

”最後の2行のためにこの小説はある” と、知り合いの方から激しくすすめられ手に取った。 映画化のタイミングで品薄につき、書店をはしごして見つけた。 「強い者より弱い者が苦しまなかったと誰が断言できよう」というロドリゴ司祭(比較的強いサイド)と弱…

角田光代「紙の月」

おもしろかった。 わかば銀行の支店で契約社員の女性が約1億円を横領。 というニュースが出て、当の梅澤梨花は行方不明。 社会を騒がせる横領事件と人のお金を自分の口座に移す自然さとのギャップ。 大学生の光太と出会ってしまったことで、横領に手を染めて…

綿矢りさ「夢を与える」

すとんと足を踏み外したかのようなターニングポイントが ぱっと見、健全そうなこの小説にも用意されていた。 綿矢りささん、ほんとうまい。起承転結の"転結"の曲がり方がすごい。 芸能界に身を置きながら変に染まることなく、周りの大人やマネージャーでもあ…

「恋の聖地―そこは最後の恋に出会う場所」

なんとはなしに甘い小説が読みたくて衝動買い。 全国各地にある「恋人の聖地」を舞台にしているらしい。 窪美澄「たゆたう ひかり」は、親も病気になってしまう年頃になったんだなぁとしんみり。淡い恋もほのかに発光して救いに。 三浦しをん「聖域の火」は…

冲方丁「天地明察」

読み応えのある時代小説で、本屋大賞受賞作(2010年)、さすが。 碁打ちにして暦法家の渋川春海の人生を丁寧に追ったお話。 情熱大陸の取材のような密着度でドキュメンタリーを長回しで見ている感覚だった。 日本独自の暦が生まれるまでを江戸幕府の勢力図と…

ヘミングウェイ「移動祝祭日」

ちょうど、旅に行く前のこと~ 神楽坂のかもめブックスさんで見つけた本。 土曜文庫っていう名前も、黄色の装丁もめずらしく わくわくした。 さて、肝心の内容は、ヘミングウェイの修業時代のパリ暮らしに ついてでした。 エッセイのように思えるのだけど、…

綿矢りさ「しょうがの味は熱い」

・でも愛と相性は別なのかもしれません。 ・ほんとに合っている二人ならもっと、自然に、とてもスムーズに、結婚まで至るものなんだ。 いや、もうこれに尽きる小説だった。 2行目はお父さんの怒りコメントの一部なんだけどもう的を射すぎていて、うんうんと…

原田マハ「独立記念日」

昨日までの私にサヨナラできる一冊 24のお話が入っている短編集。 ほっこりからシリアスまで。 タイトルの可愛さで油断して読むと、危険。 「月とパンケーキ」でいきなり切ない。 切ない方が幸せ一色より話を覚えていられるのがふしぎ。 独立っていうのは自…

原田マハ「本日は、お日柄もよく」

OLニノ宮こと葉がスピーチライターとして一人前になっていく奮闘記。 恋すれどもそれも仕事の燃料にしつつ、という仕事純度100%なストーリー。 タイトルからウェディングが中心かなって勝手に思い込んで買ったので、事前イメージとは違った。こと葉に任され…

東野圭吾「容疑者Xの献身」

直木賞受賞作。 黒一色の背景に一輪の赤いバラ、読み終えた後にふと見ると読後感とすっと重なって切なくなった。 狭い範囲の人間関係が舞台なのに、誰もが思っていた行き先と違う線路にいつの間にか切り替わっている。トリックのスリルが秀逸。2時間ドラマの…

川上未映子「愛の夢とか」

「アイスクリーム熱」「愛の夢とか」が軽めだったので油断していたら、ヘビー級がうしろにたくさん控えていた、そんな本でした。詩に近い小説。起承転結を求める人には向かない。 「お花畑自身」は自分の家と庭を愛情を傾けて作り上げた主婦が静かに狂ってい…

森博嗣「風は青海を渡るのか?」

風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ) posted with amazlet at 16.12.17 森 博嗣 講談社 売り上げランキング: 6,082 Amazon.co.jpで詳細を見る 公式サイトから↓ 聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについ…

江國香織「ぼくの小鳥ちゃん」

”小鳥ちゃんはいきなりやってきた。 雪の降る寒い朝で、ぼくはいつものように窓の前に立ち、泡の立ったミルクコーヒーを啜っていた。どうして窓のまえかというとそこにヒーターがあるからで、ヒーターは旧式の、幅が10センチくらいあるクリーム色の金属のや…

よしもとばなな「アナザー・ワールド 王国 その4」

昔からのよしもとばななファンにより響く。 風変わりな境遇の主人公片岡ノニがミコノス島で運命の人に出会った~というウルルン調の話。 王国その4ってあるわけだからその前の物語がしっかりあったんだよね。一部読んだことあるけどすっかり忘れていたので、…

森博嗣「彼女は一人で歩くのか?」

手に取ったきっかけは、ニュースで見た 本の宣伝担当の人工知能bot。 別シリーズに出てくる教授が自動で話しかけに対して答えを返してくれる っていうもの。 news.kodansha.co.jp ウォーカロン(walk-alone)人工細胞で作られた生命体。 一方、「人間」は人…

窪美澄「よるのふくらみ」

窪美澄さんといえば「ふがいない僕は空を見た」で有名。なのだけど、どうしても受け付けなくて「晴天の迷いクジラ」しか手に取ったことがなくて。 "圭ちゃんとのセックスがあれば裕太のことをこんなふうに思わなくなるのか、考え始めると頭の芯がぼんやりと…

森絵都「つきのふね」

”人より壊れやすい心に生まれた人間は それでも生きていくだけの強さも 同時に生まれもってるもんなんだよ” 中学生のさくら、親友”だった”梨利、梨利のことが好きでストーカー呼ばわりされてる勝田くん、人類を救うという宇宙船の設計図をひとり引きつづける…

原田マハ「ジヴェルニーの食卓」

印象派の画家にまつわる掌編小説を集めたもの。 マハさんの描く世界は優しくて、冬の晴れた日にそっと降る雪みたい。 ハッピー!って終わりはどれもないけど、幸せの引き出しが自分の中で増えてると思えるお話ばかり。 とくにマティスとピカソの刺激的な交流…

伊坂幸太郎「砂漠」

砂漠ってひとことで言うと、「社会」のことだった。 学生時代をオアシスとして思い出すなかれっていう 大学の卒業式の学長のあいさつにもあるよう、 これから出ていく世界のこと(学生目線で!) 仙台の大学生4人の、平凡と見せかけて全然平凡でない 学生生…

夏目漱石「明暗」

津田とお延は一見して仲むつまじい新婚夫婦。 の陰にちらつく、津田の昔の恋人の存在(清子)。 常に逆上ぎみの妹、お秀や勤め先の上司の奥さまである吉川夫人。 お延だけが清子のことを知らず、悪意ある吹聴で不信感を募らせていく。 いちばん黒幕っぽいの…

夏目漱石「彼岸過迄」

タイトルの由来が力の抜けるものだった件。 「元日から始めて、彼岸過迄書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実は空しい標題である」 うーん、後期三部作「彼岸過迄」「行人」「こころ」の入り口として手に 取ってみたけど、「三四郎」と同じく印象…

夏目漱石「それから」

文庫カバー裏の引用↓ 長井代助は三十にもなって定職も持たず、父からの援助で毎日をぶらぶらと暮している。実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらも義侠心から友人平岡に譲った平岡の妻三千代との再開により、妙な運命に巻き込まれていく・・・…

夏目漱石「三四郎」

これといって感想のない「三四郎」。。 「迷える羊」(ストレイ・シープ)という言葉を残して ほぼ印象消えた。 角川文庫の和柄の赤い模様にぐっときて。 大学に入ったばかりで熊本から上京してきた三四郎を ミステリアスな美禰子、与次郎、野々宮、広田先生…

夏目漱石「こころ」

読みやすくて、そのことにいちばん驚いた。 後期三部作「彼岸過迄」「行人」「こころ」と順に読んでいったところ、 断トツの入りやすさ。移動のおともによい感じ。 先生とKと奥さんの三角関係の話だと思っていた。 そして先生とKには何か特別な結びつきがあ…

夏目漱石「草枕」

智に働けば角が立つ。 情に棹させば 流される。 いやはや。 そんな人の世がいやなのか温泉場にやってきた青年画家。 特に何も起こらないのだけど、夜中の風の音、春のヒバリの空駆ける動き、 温泉に頭までつかって湯気に包み込まれる白い視界、田舎町での世…

多和田葉子「雪の練習生」

表紙のシロクマさんに哀愁があってよいなぁ。 文章は端正で、シュールなお話も抒情を含ませながら淡々と で進められてゆく。 ホッキョクグマがオットセイの編集者に原稿を出すくだりが すごく神妙だった。 今度は、子ども・孫世代が今度はサーカスや動物園で…

三浦しをん「まほろ駅前狂騒曲」

都心のベッドタウン、まほろ市で起こるローカルな事件にがっつり巻き込まれつつ、便利屋として根をおろした多田と転がり込んできた同居人の行天。シリーズ3作目で改めて思ったのが、シャーロックホームズのような謎解きは調味料みたいなもので、メインは男同…

三浦しをん「神去なあなあ夜話」

平野勇気、20歳。三重県の山奥、林業の村で就職。 林業と恋の二大トピックをめぐるドタバタ記。読みやすく勢いのある文章で、ときどき笑ってるうちにあっという間に読み終わってしまう。村の人たちとの神去トークや小学校の先生をしてる直紀への悶々とした片…

原田マハ「楽園のカンヴァス」

ひさびさに自分の中でヒットした小説。 MOMAにあるアンリ・ルソー作「夢」をめぐる謎解きと静謐な恋の話。 2000年倉敷「第一章 パンドラの箱」がどうNYのMOMAに見えなかったけど、すっと一本の線がひかれていたことが読み終わってわかる。 舞台は1983年スイ…

上橋菜穂子「獣の奏者 Ⅵ完結編」

甘くないファンタジー。 大人が読んでも、すっと入っていける。 抱える問題は現代と地続きだけど、空を飛び群れで行動する王獣や蛇を飼っている岩屋、野花がこぼれ咲く山あいなど、ここではないどこかの景色がただ美しい。 ゲド戦記のように光と闇を同じ分量…

小川洋子「いつも彼らはどこかに」

「ハモニカ兎」のシュールさにやられ、「竜の子幼稚園」の姉弟のせつなさにぐっときて。 どの短編も動物がらみで、やわらかく穏やかな異世界。 ぱっと読むと、日常のはなしと思うものの、じわじわとトリップ感が出てくる少々怖い短編集。 ひさしぶりの小川洋…

村上龍「村上龍 料理小説集」

美食とセックスと不倫と金。 ギラギラしてるなー。 出てくる場所もコート・ダ・ジュールとかどこそれって土地だったり、NY、東京とさまざま。 こんな男の人、実際いるんだろうか。 バブリーなのか村上龍オリジナルのギラギラなのか。 全く自分の生活圏とかぶ…

レイ・ブラッドベリ「歌おう、感電するほどの喜びを」

ひさびさハヤカワ文庫さん。 完全にジャケ買いの短編集。 わりと分厚い本ながら、読みたいところから進んでゆく方法ですいすい読めた。 どれも衝撃がすごくて、一度に吸収しきれないパワーがあるのだけど、 どちらかというとハートフル寄りな短編をご紹介。 …

桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

ガーリーでほんのりダークな表紙につられて、1冊100円コーナーから連れて帰ってきた。 アマゾンでは文庫版しか見つけられなかった。。 表紙に描かれた思春期の少年少女のイラストイメージが強かったのかもともと作品のイメージ通りの 姿だったのか今となって…

江國香織「スイートリトルライズ」

p.206 「なぜ嘘をつけないか知ってる?人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに」 瑠璃子は、自分の言葉が自分の心臓をうすっぺらな紙のように簡単にひき裂いたのを感じた。 「あなたが美也子さんに嘘をつくように。私が聡に嘘をつくよう…

江國香織「はだかんぼうたち」

ノーマルな恋愛軌道から離れて上空を旋回している系。 35歳の歯科医、桃子はクールで分別のある大人の女性、のはずがなぜか長年付き合ったまともな恋人と別れ、9歳年下の鯖崎とのデートを繰り返す。のらりくらりとした鯖崎は、桃子の高校時代からの親友かつ…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

舞台は19世紀の農奴制残るロシア。 ダメダメな父フョードルを持つ3人の息子、長男ドミートリイ、次男イワン、三男アレクセイ。 カラマーゾフ家の血として挙げられている性質が、下巻にずばっとあって 「カラマーゾフはまさしく二つの面を、二つの深淵を備え…

朝井リョウ「もういちど生まれる」

大学生の甘くて苦い中編集。 海を分母に、空を分子にしたら、1を超えるのだろうか。泣きたいのを我慢しているような空を見上げると、イヤフォンが少し動いて、耳の中から音楽がこぼれ落ちそうになった。 自分にこんな青春はなかったのに、経験したことがある…