tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

國分功一郎「中道態の世界」

”失われた「態」を求めて。"

帯にズバーンと書かれてる言葉通り。思ったより文法の解説メインでした。

医学書「ケアをひらく」シリーズとして出版されているところが異色。

なかなか読もうと思いにくいこの本、書評で見かけて興味を持ち、さらに学生時代の先輩からイチオシされたこともあり、ようやくクリックして注文。

 

ギリシャ語の例文を用いて、かつて存在していて、いつしか英文法の中では見られなくなった中道態とは一体どういうもので、どんな役割を果たすのかについて丁寧に帰納法アプローチを積み重ねた一冊。能動態「する」と受動態「される」のハーフのような中道態、読み終わって気持ちがふっと気持ちが軽くなった。

例えば「悼む」という状態は自分の意志であると同時に、他者によって引き起こされた感情ともいえ、能動態、受動態とはっきり分類しにくい感情という。こんな例文を重ねていくことで、意志への信頼が揺らぐのと同時に、これまでの人生で周りから受けてきた影響を明るく肯定できるようになってくる。

 

最後の章では白鯨で有名なメルヴィルの、ある小説の登場人物たちをロールモデル

として中道態についてまとめてあった。終わりにかけての失速と例を挙げたことで逆にわかりにくくなってしまってることは否めずな残念なエンディング。。

 

「あらすじとイラストでわかる 禅」

今度、鎌倉の円覚寺に座禅に行こうと思っていて座り方ガイドとして買ってみた。

禅のお坊さん紹介、名言の解説、お寺ガイドなどなど。

文庫ぎんが堂っていう出版社さん、聞いたことなくて若干不安だったけどコンパクトにまとまっていてふつうに読みやすかった。

春在枝頭已十分

(はるはしとうにあってすでにじゅうぶん) 

歩き回って戸外に春の気配を探したが見つからず、自宅の庭先で香りを放っていた梅の花。漢文より。

 

電車に乗って遠くの名所に行かずとも近くで四季を楽しもうと、近所の公園でたまにおにぎり食べていることに味方してくれてるみたいでうれし。

 

 

「スッタニパータ 釈尊のことば」

自己を苦しめず、他人を傷つけない言葉のみを語れ。これこそがよい言葉である

 

それぞれ自らの宗派の宗教的ドグマにいつまでもとらわれつづけていて、相互に対立する立場に固執し、それぞれ別々に「われこそは権威者である」と宣言している。「われわれが言うように知るひとこそが宗教的真理をさとっているのであり、われわれの言うことに反対の立場を表明し論難するようなひとは、絶対自由を得たひとではない」と。 

 

こう振る舞おうというアドバイスから輪廻転生、宗派間の論争についてまでいろいろ載っていた。現代語訳なのでボリュームはあるけど、読みやすい。似た内容も多いので拾い読みしつつ、ぱらぱら。

昔から宗派間の論争ってあったんだなぁ。

正しいことや行動原理ってわかっててもできなくて結局どう制度設計していくかということなんかな。あと2千年くらい経ったらAIによって人間のエゴを超えた知的な社会になっている気もする。AI本にそんなことが書いてあったことを思い出した。

 

 

「東京R不動産」

リノベーションしたおうちが写真とともに紹介されている。

東京R不動産が実際に手がけたプロジェクトばかり。

開放感あるオフィスでみんなでわいわい仕事できる環境とかすてきだなぁ。デザインや専門職ってほんと強みがあっていいなぁと。うらやましさを抱きつつ、憧れのまなざしで屋上にバスタブがある写真などをゆるゆると眺めた。

 

東京R不動産
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カミュ「ペスト」

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。

 

これは気持ちにゆとりがあるときじゃないと読んじゃダメですね。

閉鎖された環境でバタバタと人が苦悶して死んでいくつらさに加えて、たまたま訪れただけなのに街から出られなくなってしまう不条理さ、さらに医師リウーの友人タルーの告白にある比喩としてのペスト。

ペスト以前に、何千という人間の死に間接的に同意していたという。正義感から始めた政治活動が結果的に人の処刑につながっていた事実。善だと信じてなすことであっても人を死に巻き込んでしまうペスト的状況がずっと続いてきたという。

物語の幕引きは、ペストの終息と予言が対になっていて最初から最後まで理性的な不吉さが漂っていて、鬱本ランクベスト3に入る本だった。

 

ペスト (新潮文庫)
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いとうせいこう「想像ラジオ」

こんばんは。

あるいはおはよう。

もしくはこんにちは。

想像ラジオです。

こういうある種アイマイな挨拶から始まるのも、この番組は昼夜を問わずあなたの想像力の中でだけオンエアされるからで、月が銀色に渋く輝く夜にそのままゴールデンタイムの放送を聴いてもいいし、道路に雪が薄く積もった朝に起きて二日前の夜中の分に、まあそんなものがあればですけど耳を傾けることも出来るし、カンタン照りの昼日中に早朝の僕の爽やかな声を再放送したって全然問題ないからなんですよ。

 

とポップな出だし、マシンガントークのDJアークのなめらかな語りに耳を傾けてるうち少しずつ状況が見えてくるのです。

かわいい表紙から想像できない闇があった。深夜、木のてっぺんから、聞こえる人にだけ届く電波にのせて語りつづけるDJアーク。東日本大震災という出来事に真正面から切り込んでいて、読み進めるにつれてつらくなった。最後に救いを感じるかそうでないかは人によると思う。わたしは後者で、天災が奪う日常、日常を大切に生きてこなかったことの責任などを感じて、誰にも感情移入できず後味は不可思議なものだった。

 

想像ラジオ (河出文庫)
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ゲルハルト・エルンスト「哲学のきほん 七日間の特別講義」

月曜日 どう生きていくか?

火曜日 他人とどう生きていくか?

水曜日 道徳にはどれほどの客観性があるのか?

木曜日 何を知ることができるのか?

金曜日 世界には何が存在するのか?

土曜日 哲学とは何か?

日曜日 哲学は何のためにあるのか?

哲学のきほん──七日間の特別講義 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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読者と哲学者という2人の会話で進んでゆく。

哲学に改めて興味を持ち始めたきっかけとして、良いことって一体何なんだろうっていう疑問。人によって考え方や問題への対処法は違い、話を聞いてるとそれなりの理はある。だからって何でもかんでも正しいってわけでもなくて、そんな時NOと言える強さが欲しいのかもしれない。

本書の中で、哲学とは「内在的な善」を知り、自己と世界に対して価値ある「認識」を得るためのものとあった。ムダなことも減り、必要なものが見えてくる気がする。

 

木曜日に出てきた懐疑主義では、疑いの深さにちょっとひいてしまった。。

「われ思う、ゆえにわれあり」のデカルトは、現実を「夢」であると疑い、人間に間違った考えや思い込みを植えつける悪霊がいる(=悪霊が人間をだましている)という仮説に取り組んだ。つまり、マトリックスのように、スパコンにつながれて現実という夢を見ているだけなのかもしれないと。

人間は自身の確信を正当化できないので「知る」ことができない。体験や知覚に頼らず、思考というツールだけで自身の確信を正当化することができないという。

デカルトは、人間は神を見たり聞いたりしなくても考えることができる→ゆえに神は存在する→善なる神が存在するなら悪霊が人間をだますことはないと考えたみたい。しかし、この議論はまだまだ決着がついておらず。そのそも悪霊がいるという疑いに正当な理由などなく、間違っているかもしれないetc