tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

遠藤周作「沈黙」

”最後の2行のためにこの小説はある”

と、知り合いの方から激しくすすめられ手に取った。

映画化のタイミングで品薄につき、書店をはしごして見つけた。

 

「強い者より弱い者が苦しまなかったと誰が断言できよう」というロドリゴ司祭(比較的強いサイド)と弱き者代表選手のようなキチジロー。

キチジローがユダポジションにもかかわらず、妙に憎めない存在だった。

 

ロドリゴに対して決定的なひとことを放つフェレイラ司教。

日本人は人間を超える力を持った存在(神)を考える力がない、と。

 

神を信じて殉教したものへの疑問符、信じて生き残ったものにも与えられる踏み絵後の人生。神って何なの?落としどころを見つけられず、現在探し中です。

 

ハリウッドの映画では、監督が外国の方なのでキリスト教における神について本とは違うアプローチができる気がする。しかし、拷問シーンが怖くていまだ観にいけておりません。。

 

沈黙 (新潮文庫)
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遠藤 周作
新潮社
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角田光代「紙の月」

おもしろかった。

わかば銀行の支店で契約社員の女性が約1億円を横領。

というニュースが出て、当の梅澤梨花は行方不明。

 

社会を騒がせる横領事件と人のお金を自分の口座に移す自然さとのギャップ。

大学生の光太と出会ってしまったことで、横領に手を染めてしまう。

読む前は、女たらしのだめんずに利用されるんだろうなと思っていた。それが真反対で、梨花が光太を利用している怖さがひたひたと迫る。

モラハラの気がある夫、子どもに恵まれないこと、仕事にも肯定できる価値が見いだせないこと。ただの不倫で終わる人もいたと思う。

そこでとどまれないのが梅澤梨花という人間で、梨花を知る女性たちの中にもあるスイッチだった。読んでいて、自分はここまで暴走できないけど、理解できてしまう書き方だった。

 

紙の月 (ハルキ文庫)
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角田 光代
角川春樹事務所
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瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」

帯に「20代が生き残るための思考法!!」とあって、

先日30代入りしたことから一瞬迷ったけど読んでみた。

 

橘玲っぽくダークな真実を暴く書かと思ったら全然そんなことなく、率直に資本主義の暗黙のルールを語ったものだった。何歳でも読んで損はないと思うけど、年齢があがると経験則でこれらのことをすでに知ってたり、スタート地点には戻れなかったりするから若者向けなんだろうなぁ。

 

・英語やITや会計のビジネス本があまた出ているのは「不安解消マーケティング」と呼ばれるもののせい。社会不安が大きいときに出てくる現象。

・現在人気の企業も40年後には消滅している可能性大。

・マーケターとは新しくない要素の組み合わせで「差異」を作り出せる人のこと。

(商品にストーリーと載せて売る。レッツノートいうPCにできるビジネスマンのイメージを付加した戦略など)

・基本的に新聞には、誰かが「アナウンスしてほしい情報」だけが載っている。

・公開株に投資するのは「カモネギ

機関投資家個人投資家の得られる情報には差があり、損する仕組み。

 

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社
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原研哉「デザインのめざめ」

短いながら深い見識に裏打ちされていて、ミニマリズムを地でいくエッセイ集。

デザイン考察に興味がある方には同じく原研哉さんの「デザインのデザイン」もおすすめです。

 

以下、印象に残ったもの。

 

「割れしいたけの実力」

無印良品プロ野球チームを持つのはどうだろうという提案。「割れしいたけ」や「割れせんべい」を世に送り出せる着眼点を持つブランドであることからの発想。

「割れしいたけみたいに地味だけど実力は確実にある選手ばかり」を集めたチーム。こういうのあったら面白そう!

「セーターの鮮度」

標高4000m、ペルーの山地でアルパカの毛を刈るの巻。そこから編まれたセーターを着た感想。思わず吹き出す。

「デザインと数学」

誰も見たことがない発想やかたち、関係性や問題を「こうだったりして」と、仮想しヴィジュアライズしてみせるのがデザインである。

 

 

 

デザインのめざめ (河出文庫)
原 研哉
河出書房新社 (2014-01-08)
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綿矢りさ「夢を与える」

すとんと足を踏み外したかのようなターニングポイントが

ぱっと見、健全そうなこの小説にも用意されていた。

 

綿矢りささん、ほんとうまい。起承転結の"転結"の曲がり方がすごい。

 

芸能界に身を置きながら変に染まることなく、周りの大人やマネージャーでもある母親とうまくやりつつのびやかに成長し、学業にも手を抜かず難関高校にも合格する。

そんな夕ちゃんの軌道がそれてしまうのは、お決まりの恋愛。

「夢を与える」ことの責任とは?ラストの生々しさがずっと胸につかえる。

 

夕ちゃんの成長と並行して描かれるのが母親の幹子と父親の冬馬の冷えた夫婦仲。

フランスの血が半分入った冬馬の、優しくて気の弱いところを利用しながら繋ぎとめようとする幹子の執念が行間に漂う。

 

「どんなに強く望んでも手に入らないものはあるの」

と言える強さを持てた娘を母はどう見るのだろう。

 

 

夢を与える (河出文庫)
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綿矢 りさ
河出書房新社
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「恋の聖地―そこは最後の恋に出会う場所」

なんとはなしに甘い小説が読みたくて衝動買い。

全国各地にある「恋人の聖地」を舞台にしているらしい。

 

窪美澄「たゆたう ひかり」は、親も病気になってしまう年頃になったんだなぁとしんみり。淡い恋もほのかに発光して救いに。

三浦しをん「聖域の火」は、地元広島の弥山にある「消えずの霊火堂」が舞台でここそういえば行ったことある!というプチ興奮。天狗伝説は完全にスルーしてた。

 

甘々ではなく、大人の女性たちの不器用で傷つきやすい心が伝わってくる短編集だった。傷ついてるから、今の恋を最後にしたいと思ったり、次に見つける恋を最後にしたいと思うのだろうなぁ。がつがつしたエネルギーがもうないという感じ。

自分も30代に突入し、若者ゾーンではなくてこちらにカテゴライズされることをひしひしと感じた。

恋の聖地: そこは、最後の恋に出会う場所。 (新潮文庫)
原田 マハ 千早 茜 窪 美澄 三浦 しをん 柴門 ふみ 大沼 紀子 瀧羽 麻子
新潮社 (2013-05-27)
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ベン・ホロウィッツ「HARD THINGS」

CEOって何て大変なんだろうという月並みな感想と、ただ会社に文句を言える立場というのは気楽なことなんだと気づける本。

 

ホロウィッツ自身が直面した困難(HARD THINGS)を語る本。起業家、CEOを経て現在はシリコンバレー拠点のベンチャーキャピタルを運営。

フェイスブックやインスタ、ツイッター、エア・ビー・アンド・ビーなどに投資しているようで、先見の明なのか関わったことで成長を助けたのかそのあたりはこの本のストーリーとは関係ないため不明。

 

自分の起業した事業を買収の競りにかけ、その後の運営を行い、さらにベンチャーキャピタル設立というステップの一歩一歩が心を削がれるような重みで、ベンチャーでイメージされる、キラキラ感皆無。

平時のCEOと戦時のCEOという考え方や人を正しく解雇する方法、会社を売却する方法などまさに経営の決定権を持つものしか関われない領域と苦しみが書かれていて、生身の声を書き記したエッセイのような印象を受けた。

 

p.280

おそろしく競争が激しく、流動的な環境でさまざまな要素を組み合わせて組織づくりをするのだから、何がまずいことになるかわかったものではない。CEOの成績を統計に取れば、その平均値は100点満点で22点くらいだろう。こんな低い点数は、大学時代にオールAだった人間にとっては心理的に耐え難い。特に問題を難しくするのは、誰も平均点が22点だと教えてくれないことだ。

 

HARD THINGS
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ベン・ホロウィッツ
日経BP
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