tunamayoの日記

小説、エッセイ、経済書を中心に日々こつこつ。積読との戦い。

「恋の聖地―そこは最後の恋に出会う場所」

なんとはなしに甘い小説が読みたくて衝動買い。

全国各地にある「恋人の聖地」を舞台にしているらしい。

 

窪美澄「たゆたう ひかり」は、親も病気になってしまう年頃になったんだなぁとしんみり。淡い恋もほのかに発光して救いに。

三浦しをん「聖域の火」は、地元広島の弥山にある「消えずの霊火堂」が舞台でここそういえば行ったことある!というプチ興奮。天狗伝説は完全にスルーしてた。

 

甘々ではなく、大人の女性たちの不器用で傷つきやすい心が伝わってくる短編集だった。傷ついてるから、今の恋を最後にしたいと思ったり、次に見つける恋を最後にしたいと思うのだろうなぁ。がつがつしたエネルギーがもうないという感じ。

自分も30代に突入し、若者ゾーンではなくてこちらにカテゴライズされることをひしひしと感じた。

恋の聖地: そこは、最後の恋に出会う場所。 (新潮文庫)
原田 マハ 千早 茜 窪 美澄 三浦 しをん 柴門 ふみ 大沼 紀子 瀧羽 麻子
新潮社 (2013-05-27)
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ベン・ホロウィッツ「HARD THINGS」

CEOって何て大変なんだろうという月並みな感想と、ただ会社に文句を言える立場というのは気楽なことなんだと気づける本。

 

ホロウィッツ自身が直面した困難(HARD THINGS)を語る本。起業家、CEOを経て現在はシリコンバレー拠点のベンチャーキャピタルを運営。

フェイスブックやインスタ、ツイッター、エア・ビー・アンド・ビーなどに投資しているようで、先見の明なのか関わったことで成長を助けたのかそのあたりはこの本のストーリーとは関係ないため不明。

 

自分の起業した事業を買収の競りにかけ、その後の運営を行い、さらにベンチャーキャピタル設立というステップの一歩一歩が心を削がれるような重みで、ベンチャーでイメージされる、キラキラ感皆無。

平時のCEOと戦時のCEOという考え方や人を正しく解雇する方法、会社を売却する方法などまさに経営の決定権を持つものしか関われない領域と苦しみが書かれていて、生身の声を書き記したエッセイのような印象を受けた。

 

p.280

おそろしく競争が激しく、流動的な環境でさまざまな要素を組み合わせて組織づくりをするのだから、何がまずいことになるかわかったものではない。CEOの成績を統計に取れば、その平均値は100点満点で22点くらいだろう。こんな低い点数は、大学時代にオールAだった人間にとっては心理的に耐え難い。特に問題を難しくするのは、誰も平均点が22点だと教えてくれないことだ。

 

HARD THINGS
HARD THINGS
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ベン・ホロウィッツ
日経BP
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冲方丁「天地明察」

読み応えのある時代小説で、本屋大賞受賞作(2010年)、さすが。

碁打ちにして暦法家の渋川春海の人生を丁寧に追ったお話。

情熱大陸の取材のような密着度でドキュメンタリーを長回しで見ている感覚だった。

日本独自の暦が生まれるまでを江戸幕府の勢力図と絡めながら淡々と。

恋もあるけど、やはりこれは仕事小説だなと思う。

 

下巻でやっと、碁打ちの本領である全体を俯瞰して勝ちを狙いにいく

力が発揮される。盤上の碁石のように関係者を動かしていくさまに電車が止まっても本を手放せないくらい集中してしまった。上巻は下巻のためにあったんだとしみじみ。

 

関孝和という算術の天才も切れ味鋭い人物で、いつどうやって2人は直接出会うんだろうと、どきどきさせる謎の人物ぶり。

まったく数学も星の運行も理解できない超文系な人間だけど、ロマンは感じ取れて読後じーんとした温かい気持ちになった。

 

”星は答えない。決して拒みもしない。それは天地の始まりから宙にあって、ただ何者かによって解かれるのを待ち続ける、天意という名の設問であった”

 

天地明察 上<天地明察> (角川文庫)
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「孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか」

孤独ってつらい。

でも人とつながろうとする動きにつながる感情で、そうやって人は遺伝子を残し、社会生活を送ってきたという。すっきり。

アメリカの中高年も孤独なんだなー。

科学書ではあるので、アメリカ人のアンケートだけでなく、サル・チンパンジーの実験も含まれていて、とてもまじめな書です。読みたいところを重点的に拾い読みして何とか読み終えた。

一番の収穫は、孤独の感じ方って個人差が大きく、孤独への耐性も違うということ。親から引き継いでいる部分もあり、自分でコントロールできない割合は半分程度あること。それを冷静に理解したことで、他人との温度差を責めるむださがわかった。そして、自分のさみしいと思う感情も素直に受け止められた。

その力を外に向けて人とつながっていくのもよし、自由時間を楽しむもよし、と意外とポジティブな出口に気づいたらいたのでした。

 

≪問題の三要因≫

①社会的な断絶に対する弱さ

親から基本的な体格を受け継ぐのと同様に、社会的帰属に対する要求の強弱も受け継ぐ。遺伝に根差したもの。

②孤立感にまつわる情動を自己調整する能力

内面的にも平静を保っていられる力。調整不全を起こすと、細胞レベルで抵抗力を弱めてしまう。

③他者についての心的表象,予期、推論

孤独感にさいなまれると、自分自身および他者の反応をどう予期するかに影響が出る。

 

▶ほかの行動リスト

・孤独だと要求ばかりするようになる

・孤独化と批判的になる

・何でもできることをして、寂しい人間に安心感を与えよう

不安感は深い部分に根付いている拒絶感が原因である場合が多い。家族や親密なパートナーに愛情が不変であることを示そう。

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
ウィリアム・パトリック ジョン・T・カシオポ
河出書房新社
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眞木準編「ひとつ上のプレゼン。」

人前でしゃべるのが苦手で、憧れのあまり逆に

スティーブ・ジョブズの映像から遠ざかるという。

会社や読書会でもっと明るく楽しそうに要点を伝えたいと悶々。

 

で、この本は書いている方の肩書から薄々そんな気はしてたけど、広告業界の本!

プレゼンってほぼ缶コーヒーの会社へのプレゼンを通す方法。

あと、競合プレゼンはモチベ維持が難しく、広告の方針やテイストも一貫したものにならないから企業側・広告側(クリエーター)ともによくないよね、っていう意見が多数派なんだなぁとか。

 

見たことのある広告の裏側で起こっていたやりとりを垣間見れたものの、人前で話す「プレゼン」術の本ではなかった。

ひとつ上のプレゼン。[新装版]

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エドワード・レルフ「場所の現象学」

人からのすすめがなければ、一生読まなかったであろう本(笑)

赤羽の立ち飲みおでん屋さんと同じ。

 

現代ではお店に一歩入ればどこの土地でも同じ店内のイオン、実際の地理的環境とは無関係な歴史や神話から不条理に合成されたテーマパーク(ディズニー化)など、本来その場所にしかない力がなおざりにされた結果、自分がどこかに属しているという感覚が薄れてきているのでは?というアラート。

 

現象学からのアプローチということで言葉はやや難しいけれど、伝えようとしてることはシンプル。瀬戸内国際芸術祭で島巡りをしてそこで感じた安らぎと都会の地下鉄を乗り継いでいるときの意識のギャップがあまりにも強くて、それを説明する言葉が欲しかった。読んですっきり。

 

本来の場所の力ってヨーロッパの貴族のお城とか日本の農村とかなんだろう。土地や身分からの縛りがなくなった反面、感じる居場所のなさ。自由に恋愛できるようになったら少子高齢化が進んだという反比例な感じがする。。

 

以下は覚書として一部抜粋。

 

・場所との深い結びつきは、人間との密接な関係と同じように必要であり、おそらくは避け難いものである。その関係なくしては、人間の存在は、可能ではあってもその意義の多くを失う。

・本物性とは、世界に対して心を開いて人間のありようを知ることから成り立つのであるから、偽物性とは、世界と人間の可能性に対して心を閉ざす態度である。両者は、存在及び実存のあり方として同じく正当なものであり、ハイデガーが苦心して主張しようとしたことは、偽物性は本物性よりも低い次元のものではないということだ。

・場所に対する偽物の姿勢は「没場所性」を直接間接に助長するたくさんのプロセス、あるいはもっと正確にはメディアを通じて伝えられる。「没場所性」とは、どの場所も外見ばかりか雰囲気まで同じようになってしまい、場所のアイデンティティが、どれも同じようなあたりさわりのない経験しか与えなくなってしまうほどまでに弱められてしまうことである。

場所の現象学―没場所性を越えて (ちくま学芸文庫)
エドワード レルフ
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ヘミングウェイ「移動祝祭日」

ちょうど、旅に行く前のこと~

神楽坂のかもめブックスさんで見つけた本。

土曜文庫っていう名前も、黄色の装丁もめずらしく

わくわくした。

 

さて、肝心の内容は、ヘミングウェイの修業時代のパリ暮らしに

ついてでした。

エッセイのように思えるのだけど、フィクションもどこかに

そっと織り交ぜてあるような。解説で遺作と知ってちょっとびっくり!

老人と海」「武器よさらば」を飛ばして、いきなり出会ったヘミングウェイ

村上春樹をさらにタフにしたような、生活に根差した作家であることが

びしびし伝わってくる。

 

時にお金に困りつつも、書くことで生活すると決めた芯の強さと

奥さんとの満たされた愛情関係で、読んでると胸があったかくなってきて

わりと前向きにがんばってこうという気持ちになる。

 

当時の文化人との交流も具体的に描かれていて、

特にスコット・フィッツジェラルドとの友人関係(というかお世話状態)

が友情のひとつの形である気がした。

 

若くして才能に恵まれたスコットは妻ゼルダに嫉妬され、金儲け優先・夜ごとのパーティーで身を持ち崩していく。しごくまっとうな助言をするヘミングウェイ

 

私は、だれでも、自分の書ける最上のやり方以外の書き方で、ものを書いたら、きっと自分の才能をこわしてしまうという確信をもっていると言った。ところが彼は、自分が本物のストーリーを最初に書くのだから、しまいにそれをこわしたり変えたりしても、自分には何の害にもならないんだ、と言った。

 

ミッドナイト・イン・パリ」という映画が、ちょうどその頃のパリの知識人

たちの華やかな集いをテーマにしてて、これ観てたことでイメージしやすかった。

 

移動祝祭日 (土曜文庫)
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アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway
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