BOOK&

小説、エッセイ、たまに哲学。マイペースに読み進めてます。

吉田篤弘「木挽町月光夜咄」


吉田さんの文章、ときどき無性に読みたくなります。

なんとなく手に取ったこの本、エッセイでした。

途中まで小説だと思うくらい、いつものトーンでした。こんだけ差がないのすごい笑

今の銀座に当たる木挽町で、かつて曾祖父の音吉さんが鮨屋を営んでいたようで、その足跡を辿る。

それに絡めて、ダイエット、歌舞伎、奥さんとのこと、修行時代など話はつれづれと広がっていく。

つむじ風食堂の夜」の誕生場面も。

寝る前に読むと、穏やかに眠れました。

ウェルズ「タイムマシン」

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

たまには世界の名作を手に取ろうと思い、借りてきた。

しばらく読む気が起きなかったものの、読み出すと一気に読めた。

タイムトラヴェラーが集まった知り合いたちに未来で見たものを語るという構成。

タイムトラヴェラーはバック・トゥ・ザ・フューチャーの博士みたいな研究者。

80万年後の地球、けっこう暗い。

地上に住む貴族的なイーロイ人と地底で活動するモーロック人に分かれていた。

モーロン人が映画ロードオブザリングのゴラムを思い出させる気持ち悪さだった。

2種類に分かれた理由が階級格差に由来していて、実に怖い。

タイムマシンで時空を移動するとこやマッチの炎でモーロック人と格闘するとこなんかありありと映像が浮かんでくる。

読後感はSFエンタメで、読まず嫌いはあかんなと改めて思った。

千松信也「僕は猟師になった」

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

自分が食べるものは自分で獲る、という考えがまずかっこいい。獲ったお肉を仲間に振る舞ってくれるのもいい人だなぁ。

獲物を解体できる庭付きの家を借りて薪風呂をDIY、冬までに薪をストック。

時代が縄文なら、集落を率いてそう。

ワナ猟を中心に鹿や猪を捕獲するのですが、生きてる鹿の頭を棒でどついて気絶させ、それをバイクにのっけて帰るなど。

写真付きで解体の流れも書いてあって、狩りに行った気分に。魚や山菜の採り方も書いてあって、知識の幅広さに震える。

川端康成「山の音」など

山の音 (角川文庫)

山の音 (角川文庫)

力の抜け加減が絶妙で、名文とはこういうものだと知る。

晩年の作品な上、主人公は60代の男性なので全然ガツガツしてないんです。
昭和の当時は引退モードだったのかな。

性欲とかもあってはならん、という年だったのかなと。

同居している、息子の嫁の菊子への思いを....と言うような文庫裏の解説でエロかと思ったら慈愛に近い感情だった。

息子が女癖悪くてダメダメなやつなのだけど、たまに甘えたり外の女には本気にならないなどうまくやっている。

自然に話が始まり、何てことないシーンでスーッと団欒の場からカメラを引いてくような。

このデジャヴ感..........小津映画の秋刀魚の味

愛する人達 (新潮文庫 (か-1-4))

愛する人達 (新潮文庫 (か-1-4))

愛する人たち」

こちらも晩年の作品。

変わった人ばかり出てくる短編集。
割り切れない人の心理を丁寧に追うものでした。

伊豆の踊子 (角川文庫)

伊豆の踊子 (角川文庫)

今さらですが、伊豆の踊子も読んでみました。
昔挫折したけどこの流れならいけると思い。

わ、若い!!

才気と自意識がほとばしっていて、おなかいっぱいに。あえて進展させないのが美学?

処女性が美しさにつながってるってことだと勝手に解釈。男性の理想を押しつけられてるようで、気持ち悪く感じた。

森昌麿「黒猫の遊歩あるいは美学講義」

黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)


もりあきまろさん、と読むみたいですね。

ついしょうまさんと読んでしまう。

はさておき、面白かった!

秋の夜長にオススメです。

イラスト系の表紙はラノベぽくて進んで読む気しなかったんですが、読書会で紹介されて急に気になってきたのでした。


interesting>funという感じで知的好奇心をくすぐる推理なんだなぁ。さすがハヤカワ。

24歳で教授という異例の出世をした通称「黒猫」先生とその付き人の大学院生「私」(女の子)

恋は淡いけど、巻が進むとすこーしではあるけど進展あり。

メインは美学の理論を追求する黒猫と、ポーの小説を身近で起こる事件に重ねて読み解く「私」の試行錯誤。全然違うふたつの領域がクロスするところに面白さがある。

思いもよらない美学が解決キーになるので結末が全然予想できない(笑)

これは短編集だったけど、長編が多いのかな?

武田百合子「富士日記」

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先日訪れた、清里にて

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さてさて、今日はこちらのエッセイ(?)をご紹介します。


富士日記〈下〉 (中公文庫)

富士日記〈下〉 (中公文庫)



武田百合子富士日記

ついに下巻を読み終わってしまった。
最後は切なくて泣いてしまった。

と同時にすぐにでも山に行きたくなった。

終わってしまう日常って何でこんなに切ないんだろう。


富士山麓の山小屋と東京を行ったり来たりの暮らし。山の鮮やかな四季、夫との会話、夢、家計簿など、日付ごとにまとめたもの。

とうの昔に過ぎ去った出来事なのに目の前で起こってるような現実感があって、飽きない。

昭和40年代だし、物価もちょっと違う世界なのにこの、今目の前で起こってる感覚。安室ちゃんの引退や今日誰かと交わした会話より圧倒的にある。

百合子さんが全然昭和の女じゃなくて、現代的なのも入りこんでしまった理由だと思う。

この表紙をがらっと変えたら、もっと売れると思う。

二重拠点生活、夫と娘との適度な距離感、丁寧な山暮らし、仲良し夫婦との家の行き来、SNSなし(時代的に)

お酒も飲むし、車も運転する。

ライフスタイル誌で見たことあるある設定。

全く嫌みのない、明るい人なので旅行記も読んでみたい。


 

ジェイムズ・リーバンクス「羊飼いの暮らし」

羊飼いの暮らし──イギリス湖水地方の四季 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

羊飼いの暮らし──イギリス湖水地方の四季 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


ほかに望むものなど何もない。
これが私の人生だ。


という帯、のどかな羊の風景のギャップ。

ジャケ買いフラグ🚩

ここ1年で読んだ中で、最も読みごたえがあった。

羊飼いってハイジに出てくるペーターののほほんとしたイメージしかなかったけど、めちゃくちゃ頭使うし肉体労働だった。

イギリス湖水地方で600年続く羊飼いの家系に生まれたリーバンクスさんの手記。

ユネスコのアドバイザーもされてるらしく、2017年の湖水地方世界遺産登録の立役者だとか。ツイッターもされてるよう。

これまで書かれることのなかった領域じゃないでしょうか?

家業、ワークライフバランスなんてものがない世界(仕事も生活も一体)をのぞくことができた。

オックスフォード大卒の件はさらっとしか触れれる扱いで、ベースはあくまでも祖父の背中を見て育った羊飼いとしての自分。

夏は山に放牧して、美味しい草を食べさせ、秋には自分の囲い地に集めて、いい感じの羊同士を引き合わせて春の出産に備える。厳しい冬は干し草でしのぐ。

ひとつひとつが骨の折れる作業。
いろんな農場から集まった羊たちを牧羊犬を使って自分の群れだけ集めるのもひと苦労。はぐれて遠くにいってしまった子羊を捜すのに専門のバイトがあるくらい大変とある。


観光地としての湖水地方と生計を立てる場としての湖水地方がまったく異なること、景観を守っていくための考察は観光地との関わり方について考えさせられた。観光でお金を落とすだけでは守れない景色がある。